AIが市場の持続的なテーマに
投資家は、地政学やマクロ経済などの領域において、多様な要因が絡み合う複雑な環境に直面していると考えられます。一方、ストラテジストの見方によると、少なくとも株式市場において相場を牽引する唯一のテーマは、AIであると考えられます。AIのストーリーにおいて、投資機会は半導体メーカーやハイパースケーラーにとどまらず、裾野が広がることで一段と興味深いものとなり、投資家は二次的・三次的な勝ち組を模索しています。
ストラテジストは、大きくとらえると株式市場の先行きに前向きであり、「米国市場」、「大型株」、「グロース株」、「テック銘柄」を選好しています。一方、債券市場では、投資家が「安全性」の定義を再考する過程で、米国債よりも投資適格社債を選好する傾向が強まっています。また、オルタナティブ投資の重要性が増す中で、「60:20:20」のオルタナティブを含む分散型ポートフォリオは、伝統的な「60:40」の資産配分をアウトパフォームするとして選好されています。
下半期においても、引き続き成長、安全性、分散への追求が最大の課題であるとまとめられます。
市場を牽引するAI
過去2年間の大半の期間において、AI関連企業は市場を牽引するエンジンの役割を担ってきました。ストラテジストの間では、下半期もこの傾向が続くという見方が優勢であり、91%はAIが市場リターンに最も影響する要因となるとの見方を示しています。また、市場の動きが少数のAI関連企業に左右されている状況を踏まえ、85%が集中リスクを主要な懸念事項に挙げています。
その一方で、AI技術が広範に導入され、ビジネスに深く浸透する中で、AIに対する長期的な見方は変わりつつあります。全体としてストラテジストの97%は、AIの活用が、プログラムを書く、半導体を製造する、それを支えるインフラを構築する企業以外にも広がるにつれ、AIの恩恵が二次的・三次的な広がりをもたらすと考えています。
長期的な展望として、ストラテジストの88%は、AIがもたらす生産性の向上を通じて、企業利益は拡大すると考えています。もっとも、AI関連の設備投資からの回収を来年中に見込んでいるのはわずか45%にとどまっており、運用戦略上は長期的に重視すべき要因として位置づけられています。
しかし、ストラテジストの間ではより短期的なメリットを見込む向きもあります。アンソロピック(Anthropic)やオープンAI(OpenAI)をはじめとする主要企業が新規株式公開(IPO)のタイミングを模索する中で、ストラテジストの52%は、AIセクターでのIPOにより、プライベート・エクイティの流動性が高まる可能性が高いと述べています。
また、ストラテジストは、AIの影響が収益面にとどまらない可能性について、慎重な見方を示しています。79%は、AI技術がもたらす破壊的な性質を踏まえ、(「SaaSの終焉」のエピソードに見られたような)AIへの懸念に起因するボラティリティが今後も続く可能性があり、これは複数の業種に波及する恐れがあると見ています。
投資機会にとどまらない影響
ビジネスや日常生活の様々な側面において、AIを取り入れる動きが急速かつ広範に進んでいることから、ストラテジストの88%は、5年後にはAIを特別に意識することなく、共存するようになると見ています。
ストラテジストの76%は、AIが日常業務に浸透しつつあると回答しています。前向きな評価が中心であり、職務の改善に寄与したとの声が88%、業務プロセスの変革につながったとの声が52%に達しています。その一方で、経験豊富なプロフェッショナルにとっての有用性には限界もあり、AIが職務そのものを代替するとの見方は18%にとどまります。
下半期の市場で重要なこと
AIが支配的なテーマであることは明らかですが、投資家は下半期の見通しをより包括的に描くために、その他の要因についても考慮する必要があります。運用戦略においてインフレは一定の重要性を持つものの、懸念が大きいのは債券の領域であり、株式の上昇相場の阻害要因になり得るという回答は27%にとどまります。
インフレ圧力が持続する中で、政策金利は比較的高い水準のレンジにとどまる公算が大きく、想定外の利下げが株式市場を押し上げるとの見方は21%にとどまります。一方、前向きな材料としては、市場は底堅さを維持しており、下半期にベアマーケットに移行すると見る向きは6%にすぎません。
また、米イラン戦争は、足元で両国間に存在する地政学的な不確実性を踏まえると、市場に根強い影響を及ぼすと考えられます。全体として、ストラテジストの52%は、防衛関連株は世界的な支出の増加からの恩恵を受けると見ています。もっとも、市場の牽引役が変わると考えるストラテジストはごく少数であり、戦争が地域間のリターン格差を拡大させるとの見方は36%にとどまります。
勝ち組はどこか
上半期最大の勝ち組は日本市場であり、半期のリターンは40.36%に達しました1。しかしながら、この傾向が続くと予想するストラテジストは6%にすぎません。
上半期を通じて、日経平均株価指数は、世界中の市場を活性化させたAIブームの恩恵を受けました。さらに、日本経済の成長拡大、ガバナンス改革の進展、投資家の関心回復が上昇相場を後押しした結果、30%超の上昇を実現しました1。
このように堅調な地合いが長続きしたため、多くのストラテジストは、今後の上昇余地の相当部分はすでに織り込まれたと見ています。また、AI関連銘柄や大型成長株に注目した戦略が選好されている米国の株式市場に、市場の牽引役が戻りつつあるとも考えています。
ストラテジストは日本に対して弱気に転じているわけではなく、上半期の日経平均株価指数の力強い上昇を支えた好材料の相当部分が織り込み済みであると判断しています。AIが今後も市場の主導権を握るとの見通しのもとで、多くのストラテジストは、AI経済圏の中核を担う企業が利益成長と市場パフォーマンスを引き続き主導する米国市場には、さらなる上昇余地があると見ています。実際、ストラテジストの42%は、S&P 500®が他の主要株価指数をアウトパフォームすると予想しています。
有望な投資先として米国市場に注目する一方で、ストラテジストは他の市場にも投資機会を見出しています。差は大きくあるものの、米国市場に次いで2位につけるのは新興国市場(中国を除く)であり、同市場がリターンを主導すると予想する声は18%に達しています。また、欧州(15%)、中国(9%)、中南米(9%)にも一定の支持が集まり、潜在性が評価されている可能性がうかがえます。もっとも、米国に代わる主要な成長投資先として評価するほど、投資家のセンチメントは強くありません。
現金保有に否定的な理由
地政学的な不確実性、インフレに対する懸念、市場におけるボラティリティの上昇など、神経質な展開が続く中、多くの投資家は現金へのシフトを検討しています。しかしながら、ストラテジストは、現金を保有する代償は大きくなり得ると警告しています。インフレ・リスクにさらされる(67%)、金利が上昇しているにもかかわらず、長期的な目標を達成するのに十分なリターンが得られない可能性がある(52%)、市場の他の分野に存在する魅力的な投資機会を逃す恐れがある(45%)がその理由として挙げられています。
牽引役は変わらず
2026年上半期は地政学的混乱と経済面での変化が特徴的でしたが、下期の「市場の牽引役」として、ストラテジストは過去2年間にわたって市場を主導してきたテーマを堅持しています。具体的には、76%は大型株が小型株をアウトパフォームすると予想し、82%はバリュー株よりもグロース株を選好し、88%は下半期もAIセクターの成長が加速し続けると予想しています。これに対して、バブルの崩壊が迫ると見る向きは12%にとどまります。
一方、各地域の見通しには違いも見受けられます。ストラテジストの67%が米国株式のアウトパフォーマンスを予想する一方で、米国外の投資機会に注目する向きも依然存在します。米国以外で最も人気が高いのは新興国市場(中国を除く)であり、欧州がこれに続きます。また、中国と中南米市場は、先進国市場以外に目を向ける投資家から引き続き評価を集めています。
引き続き、共通のテーマとしてテクノロジーが挙げられます。米国では、最も高いパフォーマンスを示す市場として、ストラテジストの61%がITセクターを予想する一方で、その他のセクターの割合はいずれも10%以下にとどまります。アジアでもセンチメントは同様であり、ストラテジストは市場の主要な牽引役として、テクノロジー・セクターに期待しています。
欧州はよりバランスの取れた予想となっており、金融セクターがトップ(27%)で、次いで防衛(24%)、テクノロジー(18%)と続いています。金利の上昇、安全保障面での懸念、デジタル分野への投資を背景に、同地域における投資機会に変化が生じる中で、多様なアプローチを通じてアウトパフォーマンスを追求する投資家の姿勢がうかがえます。
中南米市場は他のすべての地域と一線を画しています。同市場の主なパフォーマンスの牽引役として、ストラテジストは素材(33%)とエネルギー(27%)を挙げています。これは、世界的なコモディティおよび天然資源の需要に対する同地域のエクスポージャーを反映したものであり、さらに12%が工業セクターを牽引役になると予想しています。
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