年初来の日本株の好調を支えてきたのは、複数の成長ドライバーによるバランス
日本の株価指数は、現地通貨ベースでも米ドルベースでも主要な海外株価指数を大幅に上回るパフォーマンスを示しています。年初来、TOPIXは現地通貨ベースで22.9%上昇しており(配当込み)、米ドルベースでは21.2%上昇しました。一方、米国の代表的な株価指数であるS&P500の上昇率は、米ドルベースでわずか13.2%にとどまっています¹。日本株の大幅な上昇を説明する要因のひとつに円安の継続が挙げられますが、足元の市場動向を分析すると、日本株にこうした好調をもたらしているのは為替要因だけではないことが分かります。
マクロ経済の観点から見ると、日本は今やデフレ局面を明確に脱しつつあり、日本銀行は今後も、緩やかな金融引き締めを継続すると予想されます。これは、経済環境が正常化に向かっていることの表れです。今後数週間で予想されるインフレ率の反発は、フィリップス曲線に沿った動きを後押しする可能性が高く、これが労働生産性の改善と同時に起きています。この組み合わせは、企業の利益率を維持し、ひいては利益を拡大していくための前提条件となります。したがって投資家は、日本経済が現在、より高い名目成長のもとでまわっており、その結果として、トレンド的により強い利益を生み出していると考えています。
TOPIXのパフォーマンスを要因別に分解すると、利益成長と市場センチメントに関連する「バリュエーション」要因が、それぞれ同程度に寄与していることが分かります。このように上昇要因の牽引役である成長ドライバーが分散していることは、定義上、欧州の株価指数と比較してより健全であると言えます。なぜなら、これに対して欧州株価指数の上昇は、そのほぼすべてがバリュエーションの上昇によってもたらされており、その分、相対的に値動きが大きくなりやすい傾向があるからです。バリュエーションの水準が概ね同程度であること(TOPIXの株価収益率[PER]は16.2倍、ユーロ・ストックス50は15倍)¹を踏まえると、海外投資家は、成長ドライバーがバランス良く分散していることを理由に、日本市場への投資比率を高める可能性が高いでしょう。分散投資の観点から、海外投資家は日本の株価指数について、欧州株指数よりもバランスが取れており、米国株指数より割安な投資対象であると評価しています。日本への資金フローの増加は、成長性とバリュエーションのより良いバランスを求める投資家の需要を示しているとみています。
半導体や新興テクノロジー企業が市場を席捲するなかで、日本株市場は、特にセクター集中リスクを低減するための代替的な投資先を提供していると考えます。テクノロジーセクターはTOPIXのパフォーマンスに大きく寄与していますが、それに続くのが銀行セクターです。銀行セクターは、日銀の金融政策スタンスの恩恵を引き続き受けられると見込まれているほか、内需の回復を背景とした成長サイクルからも恩恵を受けると期待されています。また、資本財セクターも、新たなテクノロジー革命を取り込むことで成長を享受しているとみています。このような日本の株式市場全体の構造そのものが、多くの株価指数で進行している集中リスクに対する解決策の提供を可能にするものと考えられます。こうした集中は、海外投資家にとって投資判断上の懸念材料となり得ます。
さらに、金融当局および東京証券取引所が後押しするコーポレート・ガバナンス改革も追い風となっています。数年前に始まったこの構造改革は、着実に成果を上げており、自社株買いの増加や増配につながるとともに、ROEの改善に向けた取り組みも後押ししています。国際情勢に起因する逆風が時折日本株のおもしとなる可能性はあるものの、経済環境の正常化、地理的およびセクター面での分散、そして進行中の構造改革は、日本株に大きな上昇余地をもたらしています。日本は長く続いた苦境から脱しつつあります。そして、日本企業の持つ強靭性に加え、イノベーションと投資を進める力が、健全な環境のもとで企業と株価のさらなる成長を可能にすると考えられます。