世界経済は現在、非常に混乱した時期を迎えています。地政学的な不確実性が高まり、関税問題に大きな焦点が当てられています。これらの関税は、何らかの形で支払われなければなりません。その負担が消費者の支払価格の上乗せという形をとる場合には、需要の減少と景気後退のリスクに最終的に繋がっていく可能性があります。一方で米国やその他地域の企業が負担する場合には、利益率の低下を招くことになります。株価への影響も避けられないものになるでしょう。今年後半には、この影響がより顕著に表れることになると思われ、前半に比べてよりネガティブな展開となる可能性が高いと考えています。
米国以外の市場がアウトパフォームする可能性はありますか?
長年にわたりアウトパフォームしてきた米国市場ですが、今年は世界の他の地域と比べてはるかに高いバリュエーション水準でスタートしました。バリュエーションの観点からは、特に欧州が米国に比べよりネガティブなシナリオを反映していると見ています。
しかしながら、関税を巡る混乱の中で、欧州の状況は予想していたより実際は良いと見る向きもあります。現在、欧州各国はより密接に協力しています。欧州の再軍備に向けての大規模な投資が速やかに発表されましたが、同時に欧州におけるグリーン・エネルギー・システムへの移行も再確認されました。規制緩和の可能性に対する注目も高まっており、ウクライナ紛争の終結も見られるかもしれません。これらのすべてのことが、欧州経済にとってポジティブな要因であり、低位にあるバリュエーションを踏まえると、欧州のアウトパフォームが続く可能性があります。
グローバルなメガトレンドにおいて、どのような機会を見出していますか?
グローバルなメガトレンド投資家として、経済や政治のサイクルに依存せず、複数のサイクルを乗り越えられるテーマを探しています。引き続き、医療分野、特に医療機器、がん治療薬、ダイエット薬に大きな機会を見出しています。これらの分野は、関税の影響を受けにくいとの特徴があります。また、引き続きAIインフラの構築に関連する分野にも大きな機会があると見ています。この分野では、インフラの冷却技術に関係するものから、インフラの構築、実際のエネルギーインフラ建設といったものまで、機会がますます増えています。
これらはグローバルな性質を持つテーマですが、私たちは同時に、地政学的な課題に伴いグローバルなサプライチェーンの再構築がなされるなかで、地域経済の強化にも注目しています。中小企業のオンラインでの活動を支援する企業、例えば関税に関する税務や報告業務を支援する企業、またこの分野のコンサルタントなどは、今後10年間で大きな機会があると考えています。
ポートフォリオのリスク管理はどのように行っていますか?
私たちがポートフォリオを構築するとき、特に現在のように不確実性の高い局面では、バーベル戦略を採用しています。一方で、テーマ型の運用者として、経済を再構築するような長期的なトレンドに投資をしますので、やや成長志向に傾いています。他方、ポートフォリオにおいては、ディフェンシブな特性も重視しており、医療や公益事業セクターへの投資を増やし、財務基盤が堅固な高クオリティ企業の銘柄も選択しています。そうすることで、下振れリスクをある程度軽減できると考えています。