インタビュアー:投資における行動バイアス(群集心理や直近バイアスなど)は、投資家の意思決定に影響を与えがちです。ルーミス・セイレス社では、こうしたバイアスを自社の運用プロセス内で軽減するために、どのような戦略を採用していますか?
ホリー:良い質問ですね。私たちの長期的な投資期間と、長期的な構造的要因への焦点が、絶えず現れる短期投資家の群集心理から私たちを守る助けとなっています。ボトムアップのファンダメンタル分析と逆張り戦略が鍵と言えるでしょう。例えば、非合理的な恐怖は、投資家が株を過剰に売却する原因となることがあります。しかし、これこそが本源的価値に対して大幅に割安で、高品質な成長企業の株式を購入する機会を生み出すのです。このように、行動バイアスがもたらす固有のリスクを理解することで、同時にそれらがもたらす機会も認識できるようになります。
インタビュアー:アルファを追求することは、ある意味ではスキルを追求することでもあると思います。あなたのチームでは、最も持続的にミスプライシングを見出す源泉は何だとお考えですか?また、競争が激化する投資環境において、こうした機会を特定するにはどのような工夫をされているのでしょうか?
ホリー: まさにこうしたバイアスが助長する行動によって、ミスプライシングが持続的に生み出されているのです。このことが短期的な市場変数に対する反射的な反応を引き起こしますが、理性的に長期の視点で見れば、長期的な価値には影響はありません。そのため、投資判断がバリュエーション以外の要因によって決定される場合、効率的で動的な価格発見プロセスは機能しなくなるということを私たちは理解しています。一方で、私たちのようなアクティブで長期、バリュエーション主導の運用者にとっては、機会を生み出します。私たちの差別化要因は、規律あるプロセスと忍耐強い気質にあると考えています。
インタビュアー:運用戦略をリターンなどの一つの指標のみで判断することは、誤解を招くことがあると思いますが、運用プロセスが意図した通り、期待通りに機能しているかを評価するために参考にする主要な指標は他にどのようなものがありますか?
ホリー:私たちはアルファを創出するための各種信念に対して客観的な測定基準を設けています。例えば、私たちは「長期投資家」ですが、それに対する客観的指標はポートフォリオの回転率です。運用者が「長期投資」を謳うにもかかわらず回転率が60%であれば、それは矛盾しています。ルーミス・セイレスのグローバル・グロース株式戦略は、運用開始来9年の運用実績がありますが、その回転率は年率9%です。
お分かりいただけたかと思いますが、客観的な測定によって、自らの信念とプロセスや生み出される成果との間に整合性があることを示しているのです。
インタビュアー:投資家はしばしば市場のタイミングを計ろうとしますが、複利の力によって、投資を継続することが大抵はより良いアプローチであることを教えてくれます。市場のボラティリティが非常に大きい時は、どのように乗り切っているのでしょうか?戦術的にポジション調整を行うことはありますか?それともチームは常に長期的な視点の維持に注力しているのでしょうか?
ホリー:私たちは常に長期的な視点とバリュエーションの重視を堅持しています。逆張り投資家との違いは、市場のボラティリティを前提にしたうえで運用プロセスを開始し、それを見据えて計画を立てる点です。それゆえに、価格が私たちの求める水準に達するまで5年待つこともあります。まさに、行動バイアスを認識し、それがもたらす機会を活用する瞬間だと言えます。
こうしたボラティリティを見通し、長期的な構造的要因を理解し、ボトムアップのファンダメンタルズ評価を持つことで、真の長期的な価値に集中することができます。
したがって、市場の変動が激しい局面でも保有を続け、ポートフォリオのガイドラインに基づき可能な場合には、価格下落時にポジションを積み増します。これを実行した時には、その日の価格に基づいて判断した戦術的決定とも言えますが、価格下落局面を有利に活用しているのです。そのような機会を捉えるには、日々準備しておく必要があります。それが私たちの行っていることです。
本インタビューは2025年4月実施されました。