サンジェイ・エイヤ
ポートフォリオ・マネージャー
WCM
9月 19, 2025
-
4 min
サンジェイ・エイヤ
ポートフォリオ・マネージャー
WCM
イェンツ・ピアーズ
CIO兼ポートフォリオ・マネージャー
ミローバ米国
ビル・ナイグレン
米国CIO兼ポートフォリオ・マネジャー
ハリス・アソシエイツ
アジズ・ハムゾウラリ
グロース株式戦略ファウンダー、CIO、ポートフォリオ・マネジャー
ルーミス・セイレス
市場のボラティリティがもたらす絶え間ない脅威にどう対応するのか、ハリス・アソシエイツ、ルーミス・セイレス、WCM、そしてミローバの経験豊富な運用者に聞いてみました
2025年の株式市場は、控えめに言っても騒がしいものとなっています。地政学的な懸念、関税問題への不安、そして予想外に堅調な企業業績が、多くの投資家に喜びと悲観を等しくもたらしています。
この市場のボラティリティは、おそらく米国市場の動きに最もよく表れていると言えるでしょう。ハリス・アソシエイツのビル・ナイグレンが2025年前半のレポートで指摘したように、S&P500は史上最短のベアマーケットを経験したのと同時に、史上最速で最高値を更新しました。「米国株式は、わずか57営業日で底値から史上最高値に達しました。これは、1945年以降、12回あったベアマーケットにおける中央値の約2年に比べ、圧倒的に短い期間です¹。」
市場が予測不能に感じられるときこそ、データに圧倒されがちです。「前例のない」といった言葉が呪文のように繰り返され、マーケットコメンテーターはますます懐疑的になります。
そうした局面は危険をはらむことが多いですが、基本方針に忠実な投資家にとっては大きな機会にもなりえます。そして、市場が落ち着くと安易に楽観視しやすくなりますが、往々にして次の混乱が間近に迫っていることが多いのです。
アクティブ・マネージャーはどのように対応しているのでしょうか?
WCMセレクト・グローバル・グロース戦略の運用責任者サンジェイ・エイヤは、市場が過熱している時こそ冷静さを保つことが重要だと説明します。「過去、数四半期にわたり、特に不確実性が高まる局面では、冷静さとバランスの重要性を強調してきました。今年の第2四半期はその理由を如実に示す良い例になったと思います。」
「政策の不透明感から4月に市場は強力な売り圧力を受け、二桁の下落を記録しましたが、その後二桁の上昇に転じました。投機的な売りは、機会損失への恐怖に駆られた買いへと急速に転換しました。」
WCMの戦略におけるボラティリティ耐性のカギは、分散投資を重視し、ディフェンシブ、長期トレンド、シクリカルといった各分類へのエクスポージャーをバランス良く保つ、慎重なポートフォリオ構築にあります。外生的リスクに関して先行きが依然として不透明な現状では、この点が特に重要だとサンジェイは述べています。
彼はまた、「4月の売り圧力を引き起こした懸念要因は依然として存在しており、政策や姿勢が『口先だけ』から『実効性のある措置』へと変化した場合、グローバル市場に深刻な悪影響をもたらす可能性は十分にあります。」と続けます。
一方で、サンジェイは軽率な行動を戒めています。「4月の下落は、投資家が冷静さとバランスを失い、企業ファンダメンタルズを無視し、不必要な要素を取り除こうとして大事なものまで失くしてしまった、近年良く見られる事例の一つに過ぎないと思います。同様の局面は今後も確実に発生するでしょう。」
「それでも私たちは、競争優位性の拡大、企業文化の整合性、追い風となる環境を兼ね備えた企業であれば、途中の紆余曲折にかかわらず、引き続き成果を上げるとの信念を堅持しています。」
バリュー投資家として、ハリス・アソシエイツは市場のセンチメントに逆らうことに慣れています。ビルは次のように説明します。「多くの投資家は、市場の混乱時に傍観する傾向があります。それは取引を行う確信が十分ではないからです。ハリスの経験則からは、弱気相場の初期段階において、株価は個別企業のバリュエーションによってではなく、ポートフォリオ・リスクの急速な削減によって動かされる傾向があると考えています。」
「この反応はハリスにとっては好材料です。結果として、ハリスは通常、弱気相場の初期段階により積極的に動くことができます。それは、まれにみるほどに拡大したバリュエーション格差が不確実性の増大を十分に相殺すると考えるからです。歴史が示すように、ハリスが最も付加価値を出した実績のいくつかは、こうしたストレスの多い期間に生み出されています。」
過剰反応に警戒しましょう
しかし市場の回復速度は、ベテランのプロフェッショナルでさえ予想外のものでした。『解放の日』後の2週間で、ハリスでは通常比約5倍の取引を行いました。
「後から思えば、弱気相場の終焉を予見できていれば、私たちはより迅速に動けていたでしょう」とビルは語ります。「ハリスでは、市場のタイミングを計ることはしませんが、定期的なポートフォリオのリバランスは重視しています。株式、債券、キャッシュの目標ポートフォリオ比率を設定し、株式においては、さらに地域別エクスポージャーを目標化することが合理的だと考えています。」
特に大きな相場の変動後には、好調なカテゴリーを縮小し、アンダーパフォームしているカテゴリーを積み増すことでボラティリティを活用できる可能性があります。「そうすることで、ある資産の価格がますます高騰するのにつれて、その資産へのエクスポージャーが際限なく増加するのを防ぐ助けになるのです」とビルは続けます。
「さらに、避けられない弱気相場の期間を利用して、割安な資産の保有を増やすというパターンを確立することができます。この手法は、下落後に売却するという逆効果な誘惑を、完全に排除はできなくても大幅に軽減するのにとても役に立ちます。」
長期的な目標を見据えることも、市場の雑音を遮断するのに有効な手段です。ミローバのグローバル・サステナブル・エクイティ戦略の運用チームは、2025年に経験したようなボラティリティの高まりの中でも、長期的なテーマの視点で世界を見ることに注力しています。
「私たちの投資手法は、世界は緩やかに変化しているという考えに基づいています」とポートフォリオ・マネージャーのイェンツ・ピアーズは話します。「現在の生活様式と10年後の生活様式を比べれば、その間には非常に大きな変化が生じており、これは変わることのない真実といえます。人口動態の構造的な変化、環境、技術、文化やガバナンス面における移行がそれにあてはまり、その多くは世界のいかなる選挙結果や景気サイクルにも左右されずに持続するものです。」
「長期投資家として、長期的な思考を維持し、現在のバリュエーションを考慮しつつ、ポートフォリオのアイデアに落とし込んでいくことが極めて重要です…。しかし、この変動の大きい環境を乗り切るには、世界の変化に焦点を当てるだけでなく、ベンチマークや市場環境に対するリスク管理も重要となります。」
ルーミス・セイレスのグロース株式戦略チームが投資環境を捉える上でも、より長期的な視点は不可欠なものとなっています。ポートフォリオ・マネージャーのアジズ・ハムゾウラリが指摘するように、市場のボラティリティは当面緩和しているものの、未来は常に不確実であることを肝に銘じる必要があります。
アジズは次のように話します。「過去150年間(1871年から2022年)で15%以上の市場調整は、23回発生しています。つまり約6年半ごとに重大なマーケット・イベントが起きているのです。それらの主要なイベントが起きた前日の日付に遡って、新聞や雑誌から当時の人々の見解を確認してみると、ほとんどの場合、当時の人々は不意を突かれていたことが分かります。」
「市場は往々にして『リスクオン』か『リスクオフ』で考えられます。私たちが『リスクオン』と言うのは、事前に差し迫るリスクを認識することはできないからです。実際、大半の場合においてリスクは実際に発生するまで見えないものであり、発生して初めて容易に特定できるようになります。投資家として、私たちはこの不確実性を受け入れ、活用すべきだと確信しています。」
言い換えれば、リスクは常に存在するものであり、それに伴い不確実性も常につきまといます。時には明確に認識されたりもしますが、そうでないことの方が多いのです。
「誰も語らないリスクが常にすぐそばに潜んでおり、人々がそれを話題にし始める頃には、大抵手遅れになっているのです」と、アジズは結論づけています。
2025年8月執筆
1 出典: ハリス・アソシエイツ https://oakmark.com/news-insights/our-bottom-up-approach-to-a-top-down-crisis-u-s-equity-market-commentary-2q-2025/
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