経済的なモート(競合他社から企業を守る競争優位性)は投資の聖杯として、称賛されることが多いものです。しかしモートを特定するだけでは不十分です。それよりも重要なのは、企業のモートの軌道を理解することだとWCMでは考えます。
ポートフォリオ・マネージャーのマイク・ティエンは、「多くの投資家が犯す過ちは、投資保有期間を通じて競争優位性はほとんど変化しないと想定することです。」と指摘します。
WCMでは、異なるアプローチを採用し、モートが拡大している企業を発掘します。WCMは、競争面で優位性を強化させ、持続可能な成長に積極的に取り組んでいる企業に焦点を当てています。「WCMは、より良くなっている企業と協力したいと考えています。」とティエンは強調します。「つまり、モートの軌道がポジティブであることが認められる企業です。」
重要なのはモートがどういう軌道を描いているか
すでに確立されたモートを有する企業を単に保有するのではなく、WCMでは企業の競争優位性がどのように進化しているのかを積極的に評価しています。これには、次のような様々な要素への深い分析が含まれます:企業は市場での地位を強化できるような投資を行っているのか?技術革新や規制変更、そして常に変化する消費者嗜好に対応できているのか?
一方で、WCMが避けるのは、「依然として優れた企業」としか言えない企業です。ティエンは簡潔に警告します。「『依然として』という言葉を文に含める時点で、それは良いビジネスではあるものの、過去に比べて劣っていることを示唆しており、WCMではそのような企業はバリュートラップであると考えます。」
WCMの「モートの軌道」アプローチを如実に示す好例が、東南アジアのEコマース、フィンテック・プラットフォームの企業であるシー・リミテッドです。ティエンによれば、同社は「波乱の歴史」を持ち、投資家は将来性を悲観していました。しかしWCMは「現地で支配的な位置にあるECプラットフォームの収益性が向上し、2~4位の企業に対するリードを拡大」したことにより、競争環境が同社により有利になっていると分析しました。
さらに、WCMではシー・リミテッドがフィンテック事業で成長する可能性を認識し、ラテンアメリカにおけるメルカド・リブレの成功例との類似性を認識していました。これは好転した企業の素晴らしい実例といえます。
「WCMでは、数多くの新たなテーマの出現し、それが急増、加速していることを認識しています。」と、クライアント・ポートフォリオ・マネージャーのダニエル・ワイカートは付け加えます。彼はまた、NATO加盟国の防衛費増加を背景に、チームが欧州の資本財銘柄(サーブなど)に早期から投資した事例を挙げます。これらの企業は「経済性が著しく改善し、今後大きな成長余地があります。」と、ワイカートは言います。
ワイカートはまた、メガトレンドから直接的に恩恵を受ける企業の、さらにその先をみることの重要性を強調します。多くの投資家が「マグニフィセント7」(MAG7)と呼ばれるテック大手7社に注目する中、WCMではホワイトラベルのネットワークスイッチを製造するセレスティカや、天然ガスタービン設備を建設するアーガン・インコーポレイテッドといった企業に魅力的な機会を見出しました。つまり、不変のモートだけでなく、積極的に転換している企業に焦点を当てているのです。
「WCMではMAG7企業群について徹底的なリサーチを実施しました。アマゾンを除いては、成長ドライバーを評価してみると他の企業、特に時価総額の小さい企業が、より明確なモートの軌道を持ち、はるかに魅力的なバリュエーションであるということが、過去の事例として見られました。」と付け加えます。
転換ストーリーの力
ポジティブなモートの軌道を特定すると同時に、WCMでは「転換ストーリー」も積極的に評価しています。「例えば2~3年後には今日と全く異なる評価を受けるであろう企業を見極めることは、非常に興味深いことです。」とティエンは言います。このような転換点は、ストーリーの変化、つまり企業の将来価値がまだ理解されていない段階から、市場における認識が変化したことを示します。本質的には、WCMが目指すのは変革の間際にいる企業を特定することです。そのような企業には、カタリストによって価値が実現され、市場認識が再構築される準備が整っています。
新興国市場を見た場合、韓国も興味深い展開を迎えています。歴史的に韓国は、不十分なコーポレートガバナンスにより非常に割安な評価を受けてきました。しかし近年、日本が企業価値の変革を成功させたことを受け、新たな法律に支えられて、韓国でもコーポレートガバナンスの改善を再現しようとする強い推進力が生まれています。
WCMの強み
WCMは、モートの軌道に焦点を当て、転換点を迎えるストーリーを見出すことで、現在単に成功しているだけでなく、将来さらに成功する可能性を秘めた企業を特定することを目指しています。このダイナミックなアプローチと、業界ごとの特性に対する徹底的な理解を組み合わせることで、従来の静的な分析では見逃されがちな投資機会を発見することが可能になります。「現在のメガテーマには関連の未開拓領域が数多く存在しています。そうしたトレンドから恩恵を受ける『ポジティブなモートの軌道』の事例を、WCMでは積極的に探求しています」とワイカートは締めくくります。