- APAC(アジア太平洋地域)のファイナンシャル・アドバイザーの半数(50%)が、今後5年間でAIを活用した自作の投資ツールが最大の競合相手になると考える一方、現時点では他のアドバイザーが最大の競合相手であると指摘した回答者は54%であった
- 日本のアドバイザーの半分近く(46%)が、勤務先からAI活用を求めるプレッシャーを感じていると回答した
- 調査対象となったAPACのアドバイザーの約3分の1(32%)が、AIによって仕事を奪われることを懸念する一方、同じ懸念を共有する日本のアドバイザーの割合は平均的にやや低い水準(25%)にとどまった
- 地政学的な不確実性が解消されない中で、APACのアドバイザーの60%(日本のアドバイザーの69%)が、顧客からポートフォリオの地域分散を強化するよう求められていると回答した
中東の紛争、世界的なエネルギーショック、地政学的な再編、金利の不確実性などの課題があるにもかかわらず、世界のファイナンシャル・アドバイザーは今後数年間の成果について依然として楽観的であることが明らかになりました。ナティクシス・インベストメント・マネージャーズが発表した「2026年ファイナンシャル・アドバイザー調査」によると、APACのアドバイザーは今後1年間で資産残高が13.2%(世界全体では11.9%)増加すると見込んでおり、さらに今後3年間の年平均資産成長率は14.5%(同12.8%)になると予測しています。
しかし、こうした目標の達成は容易ではありません。アドバイザーは新たな技術やAIとの競合、高齢化や若年投資家層における顧客獲得率の低さといった、業界が直面する様々な構造的課題に対処する必要があります。
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズはAPAC(オーストラリア、日本、香港、シンガポール、韓国)の650人を含む、世界23カ国、計2,950人のアドバイザーを対象に調査を実施し、成長戦略や課題、市場の変動にどのように対応しているかについてのインサイトを発表しました。
不確実な環境下で顧客の投資継続を支援
アドバイザーが真っ先に取り組むべき課題の一つは、すでに獲得している資産の維持です。APACのアドバイザーの69%(世界全体では74%)が、顧客は現在の市場の不確実性に不安を感じており、その結果、より多くの資産を現金で保有したいと考えていると報告しています。詳細に見ると、世界のアドバイザーの半数以上(57%)は、イランにおける紛争が株式市場にとって厳しい1年のきっかけになりうるという懸念を示しています。日本でも、アドバイザーの66%が同じ懸念を共有する一方で、インフレの高騰(70%、世界平均は54%)と地政学的な不確実性(68%、世界平均は64%)が懸念の上位を占める結果となっています。
紛争がリスクを高める環境において、世界のアドバイザーの70%、APACのアドバイザーの60%が、顧客からポートフォリオの地域分散を強化するよう求められていると回答しています。日本のアドバイザーの場合は69%であり、APACよりも世界平均に近い水準となっています。
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの日本法人で代表取締役社長を務める井上真司は、次のように語ります。「アドバイザーは現在、様々な変革要因への対応を迫られています。業界は不確実な市場環境による短期的な課題に加え、AI、デジタルとの競合、顧客の高齢化、そして業界全体の引退ラッシュという大きな構造的変化に直面しています。短期的には、不確実性に直面する投資家の不安を和らげることが重要ですが、長期的に成功するためには、資産配分の提案を超えた、付加価値を証明することがアドバイザーにとって最も重要な要素となるでしょう」。
人工知能(AI)における機会と効率化の追求
アドバイザーが直面する潜在的な変革要因の中で、AIは顧客ポートフォリオやアドバイザリー業務に最も大きな影響を与える可能性があります。今回の調査では、APACのアドバイザーの中で、今後20年間にわたりAIが市場を牽引する可能性があると回答した割合は75%となっています。さらに、アドバイザリー業界においてAIが競争優位性を発揮する可能性があると回答した割合はこれを上回り、APACのアドバイザーでは83%、世界全体では71%に上ります。
また、調査対象となったAPACのアドバイザーの79%(世界全体では74%)が、AIの導入により顧客との時間をより多く確保できる可能性があると回答しており、63%がメールの作成、会議議事録の作成、研修資料の送付などにAIを活用していると答えています。
その一方で、業務効率化を推進するAIの可能性を背景に、組織における効率化を目的としたAI活用のプレッシャーは明確に高まりつつあります。日本のアドバイザーの場合、顧客とのコミュニケーション、調査、顧客動向予測にAIを取り入れていると回答した割合は、世界のアドバイザーとほぼ同じ水準ですが、ポートフォリオの分析に活用していると回答した割合は32%と、世界平均(40%)を下回ります。
デジタル化はアドバイザーの競合環境を変えつつある
AIモデルがアドバイザーの能力を向上させる可能性はあるものの、その高度化が進むにつれ、大きな競合上の脅威にもなりつつあります。ナティクシス・インベストメント・マネージャーズが実施した先行研究 では、ミレニアル世代の半数強(58%)とX世代の51%が、従来の対面形式よりもデジタルによるアドバイスを好むと回答しています 。また、金融アドバイスを受ける際にアルゴリズムを最も信頼する傾向にあると回答した割合は、APACのミレニアル世代で52%、X世代で45%に上ります。
その結果、世界のアドバイザーの43%が、5年後には自己判断を行う投資家向けの改良されたツールが最大の競合相手になると予測しており、APACのアドバイザーの割合はこれをさらに上回り50%となっています。一方、現時点でこのように考えるアドバイザーは、世界全体では7%、APACでは9%に過ぎず、また、5年後に他のアドバイザーが最大の競合相手になると考えるアドバイザーは、世界全体では11%、APACでは10%にとどまります。